教員。妊娠。出産。子育て。

高校教員として働く私の、妊娠、出産、子育て、勉強についての備忘録。

二本目の歯

万緑の中や吾子の歯生え初むる

中村草田男


確か、小学生の時に初めて習った俳句だと思います。中学生の時もやった記憶があるので、覚えていました。

今日見たら、何と高校生の教科書にも載っていました。自分の授業では扱ったことがありませんでしたが…。

万緑は、夏の季語で、5月のことだったと思います。
生い茂る緑と、生えてきた歯の白の色彩のコントラストだとか、漢語と和語の対比とかいったことが、鑑賞のポイントでしょうか。

しかし、この句の良さは、この年になって初めて分かった気がします。

緑の生い茂る生命力に溢れたこの季節に、私の子どもの歯が生えてきたよ。

意味としてはそれだけなのですが、もうそれだけで、作者にとっては万感の思いであったに違いありません。これが果たして小学生にどれくらい伝わるのだろうか、などと思いましたが、大人であっても、昨年の私にはまだわからなかっただろうなと思います。

うちの子も、二本目の歯が出てきました。

一本目は3月の下旬くらいでしたが、白くぽつっと点に見えたものが、実は歯だったとわかったときは感動しました。

そんな目で、高校生の現代文の教科書を改めて見ていたら、こんな短歌も載っていました。

われが子で子がわれなのかわからぬまで子を抱き湯に入り子を抱き眠る


うわぁ、わかる。新生児期の子育てをした人にはわかりすぎる歌。こんなのが載っていたのだなあと、今さらながら気がつきました。高校も、2、3年になってしまうと、短歌俳句の類いは扱わなくなってしまうので、じっくりと読んでみたことがありませんでした。全く恥ずかしいものです。

われが子で子がわれなのか…わかっていないのは赤ちゃんの方なんですよね。親も含めての自分であり、親と自分が世界の全てというのが、生まれたての人間ですから。

こういうのを、もっと授業で扱うことが、自分の責務ではないのかな。組んでる相手の先生の意向もあるのですが、何となく、毎年扱うものが決まってきているので、もう一度考え直してみるのも必要だと感じました。